見返り美男 2014.August.21

20140821

 

 

以下はちょっと長文なので、

お時間があれば・・・。

 

思い出、です。

 

 

 

3年前の7月、その人と初めてデートをした。

電話で私が「明日、美容室に行くんだ」と言ったら「行きたい」というから、

私の後に予約をとった。

そこはJさんという美容師さんが一人でやっているお店で、

彼も一度行った事があり、Jさんを「あのひとはわかってる!」と言い、

矢鱈と気に入っていた。

 

翌日、自分のケアを終えて駅まで迎えにいくと、

少し遅れてパン屋の袋を提げた彼が現れた。

「暑いねー。」

お互い真冬生まれで、夏は大の苦手。

「ゆか(私の姉)は、夏、大好きなんだよね。シンジラレナイ。」

などとおしゃべりしながら、私たちは汗をかきかき美容室に戻った。

今度はちゃんと一人でも行けるように、私は目印になる電柱や看板などを

逐一彼に覚えさせた。

でも、多分、次回も一緒に行くんだろうな、と思った。

 

美容室に着くと、彼はパン屋の袋から飲み物とパンを3人分取り出し、

最後に

「はい、たまちゃん。かわいいでしょ。」

と言って、アザラシの顔をしたあんパンを私にくれた。

 

でも、私は彼がカットしてもらう間に、

家で待つ猫たちに夜ご飯を食べさせ、また美容室に戻ってこなければならなくて、ちょっと焦っていた。

「わー、かわいい」とおざなりに言い、「おうちで食べる」と、

パンをつかんで家に帰った。

彼はちょっとしょんぼりして、パンをぱくついていた。

 

私よりもずっと短毛な彼のカットが終わる頃には戻らなければ、と、

ばたばたと猫たちにご飯をあげ、汗だくで美容室にとんぼ返り。

 

せっかくキレイにしてもらった髪は、もはや見る影も無い。

 

美容室につくと、彼はJさんと談笑しながら仕上げに入っていた。

すごく楽しそうで、とっても綺麗にしてもらって、

彼のご機嫌オーラがふわふわと漂っている店内は、

なんだかとても居心地がよかった。

 

「写真、とろうよ」

お支払いも終わって彼がおもむろに取り出したカメラは、

私がプレゼントしたデジカメだった。

白いボディーのものをあげたら、

「オレンジがよかった」と憎まれ口をきいたそのカメラは、

彼の手にしっくりと収まっていた。

 

私と彼、彼とJさんのささやかな撮影会。

今度くるときに写真、あげるね、とお店をあとにし、

早めの晩ご飯を食べて、私のとっときのバーに連れて行った。

 

自分がすっかり大人の女性である事、

素敵なバーを知っている事、

バーのマスターに彼を紹介したかった事、

姉もよく来るので、あわよくば、姉も合流できるかもしれないという事、

などなど、その要素を彼も重々承知で、

これまた楽しいひとときとなった。

 

初めてのデートにしては上出来。

また、このコース、やりましょう。そうしましょう。

 

ニコニコ、ニコニコ手を振って別々の家に帰った。

 

 

 

結局、これが生きているチチの、最後の姿になってしまった。

 

デートはただの1回こっきり。

 

もう記録が更新できない。

 

せめてあの美声が聞きたいところだが、それも叶わない。

3年経った今も、のんきな電話がかかってくるような気がしている。

 

この季節に美容室に行くと

「あのときもらった牛乳、まだ冷蔵庫にあるんだけど」

「えー、それ、いつかバクハツしちゃうんじゃない!?」

と言い合うJさんと私の声は、毎年、夏風邪をひいている。

 

「見返り美男 2014.August.21」への13件のフィードバック

  1. yukariさま

    両ちゃん、最近後ろ向きが流行ってしまって、
    どろっどろになっています。

    時間って、どんどん過ぎてしまうから、
    会いたいなって想ったら、
    なんとしてでも会っといた方がいいみたいって、思いました。
    でも働いていると、なかなか時間が作れないですよね。
    難しいです。

    写真は、データの入ったカメラごと形見にもらいました。
    でも、父の部屋に現像したその写真が、
    ちゃんと写真立てに入って飾られていたそうです。
    カメラとその写真立てが、形見です。

    mai

  2. やっちゃんさま

    17回忌。。。
    とても早いお別れだったのですね。
    でも夢に出てきてくれるなんて、いいな。
    私も待っているのですが、
    思うようにはいかないみたいです。

    父も動物好きでした。
    「すきじゃない」とか言っていましたが、
    「庭にみーちゃん(←近所の飼い猫を勝手に命名w)が来るんだけど、
    何あげたらいい?」
    って、電話がかかってきてましたから(笑)

    両ちゃん、巨漢ですよー><
    ダーリンが上手い具合に隠れ蓑になっているだけです。
    とほほ。
    こっちゃんは、だいぶ食べるようになりました!
    ありがとうございます♪

    mai

  3. taiさん

    読んでくれて、ありがとう。

    忘れたくなくて、書いちゃった。

    mai

  4. お父様のとの思い出をずっとたどって読ませていただきました。
    胸がギュッとしめつけられて目からしょっぱい水が溢れています。
    生きることには不器用だったけれどとっても純粋な方だったと書かれたご本を読んで
    感じています。
    きっと、きっとサクラを観にいらしていたのでしょうね。
    私の父はもう30年も前に亡くなり何も親孝行はできませんでした(涙)
    せめて動物が好きだった優しい父に恥ずかしくないように生きていきたいと思います。
    maiさんのお幸せをお父様はきっと見守ってくださってますよ。

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